奥三河の秘境地帯に位置する「大入集落(おおにゅうしゅうらく)」に行ってきたので、どんな場所にあるのか今現在の廃集落の様子をリアルに伝えてみたいと思います。
大入集落は花山天皇の隠れ里?
大入集落は、愛知県と静岡県の県境近くの山々が連なる超秘境地帯に位置していて、昭和30年代に最後の住人が山を降りからは無人となった廃集落。その秘境に位置する大入集落には、花山天皇が隠れ住んでいた伝説や東栄町の奇祭「花祭り」の起源説があり、何故こんな山の中に集落が出来たのか?謎が多い事でも知られている場所。
そもそも大入集落を知ったのは、とあるテレビ番組を見たから!秘境地帯に時間がとまったままの建物の様子を見た瞬間に行ってみたいに変わり、静岡県の秘境地帯にある「京丸集落」同様にいつ行くの?今でしょ!!的に今すぐに行きたくなった秘境集落。ただここは道中の山道が確立されていない場所につき、事前にネット情報を集め1度目は各ポイントまでの主要時間とルートとなる林道から山道に入る場所探し。2度目に本番の登山ハイキングをかねてかなり慎重に訪れています。
大入集落の場所詳細
場所 | 愛知県北設楽郡東栄町東薗目 |
アクセス | 県道429号の通行止め林道から |
その他 | 熊や動物の目撃情報あり
明白な登山道が確立されていない場所 |
大入集落の場所は、愛知県でも奥三河地方にあたる東栄町東薗目。マップのポイント位置が集落のだいたいの位置で、拡大してもわかるようにグーグルマップでは完全に山の中を示していて、目印になるような物が一切ない場所に存在しています。集落で人々が暮らしていた頃は、山が切り開かれ家々が所々に建っていたようですが、今現在は木々に囲まれ衛星画像からではそこが集落だったことが確認できない、本当の秘境地帯。
アクセスは県道429号から
大入集落のルートは現在1択!県道429号の通行止めゲート付近から林道を歩き、離山の登山コースにもなっている803入り口ポイントから道なき山を登り、右手に崖が続いた先に集落のルート。はっきりいって登山というよりもコースを見つけながら進むルートとなっていて、スマホのマップと現在位置GPSがなければたどりつけない場所。本番前にそれぞれのポイントと林道から803登山道に入るポイントを確認したのも、ネット情報では正確な位置とかかる時間が分からない為、事前準備しました。
大入集落の道のりルート
大入集落の出発地点は、三遠南信自動車道の浦河IC付近の大千瀬川を渡った先にある県道429号ゲートからで、ここまで車で来る事が可能。この429号線の林道は開かずの道路とも呼ばれていて、今から10年以上前は豊根村の新豊根ダム付近まで通る事ができましたが、土砂崩れなどで現在車は通行止めになっている道路。ここから歩く人は、離山登山者以外ほぼいなく、通行止めがなぜ十年も解除されないのか疑問でしたが、現場に行くと一目瞭然の答えでした。
大入集落までの目安時間
行き時間 約2時間30分くらい
帰り時間 約2時間くらい
休憩を含んだ道中は写真などを撮った目安時間、普通に歩いて往復4時間ちょっとの距離。
ゲートからは忘れ物がないか確認、アキレス腱を重点的にストレッチ準備運動をしてから出発!
すぐ目についたのが通行止め看板裏の祠。無事に帰れるよう御参りしようとした所、石段の上から3段目が踏んだ瞬間にグラつき3mの高さから転落しそうに!さいわい普段体幹バランスを鍛えている為、体勢を変えトラップをクリア。普通の人ならトラップに引っかかり、転落して大怪我していた事を考えるとルートの崩落ポイントなみの危険箇所。
まるで訪れる者を拒んでいるよう!
県道429号は車線がない車一台通れる林道。進むにつれ木や岩がゴロゴロ落ちていて、ゲートから200mほど進むと素堀りの第2トンネル。
林道は大入川を上流方面に登る感じで、最初の大きな橋を超えてからは川が右側から左側に変わり第2ゲートに突入。ここからはさらに道が荒れていて、普通の道を歩くのとは訳が違い、石や枝を避けながら常に地面を意識するだけでなく落石ポイントでは上を意識したりと歩きにくい状況。
40分歩いたところでルートの中で1番の難所ポイントに到着!ここは道路が土砂崩れで崩落していて、1度目訪れた時はこの状況をどうすれば渡れるか確認した場所。
2023年6月に東三河地方で起きた大雨でさらに崩落が進んだポイントだけに、これを見れば県道429号線が何故通行止めになっているのか良く分かります。
最初のゲートから約1時間ほどで滝見橋。ここまではそれほど疲れることもなく多少の傾斜を登る感覚、横の大入川がかなり下に位置しているのを見ると、意外と登っていることに気付きました。
橋の横には滝ロケーション、ここで休憩。風景を見ると完全に山岳地帯の中、どこからか車が通るような音も聞こえましたが、人の手が一切入っていない秘境地帯なのも納得の光景。
【集落入り口の山道】
1時間40分ほどで803離山登山道ルートの入り口に到着。事前にネットで調べた情報とおりの杉の木が広がるポイントで、落石注意の看板以外は目印となるものがなく、普通ならここが集落に通じる山道とは気付かない場所。
グーグルマップで示すと東薗目の文字付近が入り口。ここから本格的な道なき山を登っていく為、アキレス腱を重点的に準備運動をしてから山道突入!
険しい山道を登る
山道は体感的に45度くらいの急斜面、以前訪れた人が歩いた痕跡箇所を探したり足場がよさそうな場所を200~300mほぼ一直線状で登ると登山道のような道が右に出現。急斜面は約15分くらい、ここからは登山道のようなそこまできつくないコース内容。
目印となるのがピンクの紐で、こういうルートが明白に示されていない場所はとにかく風景を良く見て特徴を記憶することが重要かもしれません。
少し登ると右側に崖の登山道がひたすら続き、所々にピンクの紐が出てくると、道が合っている事が確認でき、安心に変わりました。歩く場所は人ひとり通れる斜めっている道とも言えないルート、体を少し左側に傾け足も左に重心をおくため、通常の登山道よりも疲れる体感。
現在地を少し登ってはスマホマップで位置確認しているとここで若干電波を確認。事前に調べた携帯キャリアは完全にエリア外でしたが、尾根に近いためかアンテナ1本立っていて、ネットも回線速度は出ないものの利用可能でした。
道中には人工物の石垣もあり、比較的広範囲に山を切り開いていたようです。
入り口から約40分ほどで登山道の左側に無数の石垣が出現。大入集落の特徴としては、石垣が辺り一面に広がっているのが一番の特徴で、斜面を切り開くように階段状に家が建っていた跡を所々で確認。
グーグルマップで大入集落を示すとこの辺り。大入川からは結構離れているように見え、こういう秘境地帯の集落にはかかせない水源は他にあったのではないかと予想できます。
大入集落の様子
大入集落の家が建っていた場所には、石垣の下にスロープ状の入り口があり、現在は人が暮らしていた家は全て倒壊している状況。倒壊した家やその残留物は意外と残っていて、どうやって家の資材を運んだのか?謎しかない完全な秘境地帯。
石垣を登って最初の右側の家跡は倒壊してかなり年月がたっているようで、基礎となる梁が特徴的。
家付近を歩いていると何かにつまづき見ると文字入り鬼瓦発見!水文字の瓦は、家を火事から避けるおまじないの意味を示していて、静岡県の京丸集落や小俣集落以外にも秘境廃集落で見たことがある昔の日本家屋では主流だった瓦。愛知でも確認できたことから、文字入り瓦の存在は全国的規模だったのが伺えます。
廃集落で定番の瓶と自然が一帯化している光景は、何故かロケーションとピッタリ!
液体を入れていた壷のような物は、中に何を入れていたのか?無駄な物が一切ない時代だけに、暮らしにはかかせないアイテムかもしれません。
石垣一段目の左側のスペースにも家があったようで、囲炉裏のような四角く区切ってある跡は建物がそこにあったのを主張しているように存在。
巨大な岩の下には石像。まるで岩を石像で支えている光景は斬新の一言。このポイント後で出てくる熊野神社のアクセス場所になっていて、意外と重要な目印。
大入集落の主張的なメイン石垣。おそらくここが集落のメイン通路的な役割を果たしていたと予想でき、城にあるような石垣同様に見事に積んでありました。不思議だったのは、この石垣をどこからこんな数を持って来たのか?秘境地帯に運んでくるような道があったわけではない為、付近で調達していたとオレ的予想。
こういう場所の良さは、落ちているアイテムから生活を想像したり、その地形からどうしていたのかイメージできるのが良さともいえ、想像力豊かな人ほど色々な謎が解ける印象。ミステリー作家の故松本清張氏や東野圭吾氏、ドラマ相棒の杉下右京氏(水谷豊ではない)、アニメのコナン君だったらどんな推理イメージができるのか、見たいものです。
集落で一番大きな家跡
大入集落の中でも一番大きな2階建ての家跡、ネットで調べると10年前はまだ建っていた日の丸が飾ってあった家は今現在倒壊。ここはアイテムが豊富にある場所で、ウス以外にキッチン道具など多数有り。
気になったのが水を貯める目的にも見える貯水槽?のようなコンクリート状の構造物。これは一段目の石垣付近にあった物で、地面に埋め込まれている様子から、水を運ぶ水路のような役割にも見えますが、考えれば考えるほど謎でした。
人々が暮らしていた証でもある残留アイテム達。
倒壊した家の窓にはガラスを使用、明治時代から日本家屋でもガラスを使った窓が主流になった事を考えると、明治大正時代の家と予想でき、家の規模からも村長的な代表者が住んでいた別格だった家。
家々が建っていた場所から道を少し登ると倉庫のような建物。
倉庫のような建物は現存
斜面にたたずむ2階建ての建物は倉庫のような感じ、少し斜めに傾き2階の床が崩落していますが、何か重要な物を保管していた様子で、ここに花祭りの元祖道具が保管されていた可能性有り。その根拠は、家を建てるだけでも大変な場所にわざわざ倉庫保管庫を造ると考えると、相当重要な物を保管したかったとイメージできるから!
この建物にも屋根の瓦に「水」マーク。秘境地帯では火事が起きると消す手段がないことから広範囲に広がる可能性が高く、平野部で暮らす人達よりも火事の存在は大きかったのかもしれません。
そして集落から一番高い場所に学校分校跡地。当時学校には先生が住み込みで働いていたらしく、教室横に居住地の構成で、今現在は敷地にほぼ何もなく囲炉裏跡らしき物と瓦だけの場所。瓦が並べられている状況から建物が崩落した後に撤去されたように見えました。
ここからは少し離山登山道を登って、一番見たかった集落の神が祭られている熊野神社を探してみましたが、どうしても見つけることができなく、何気に現在位置をスマホマップで確認すると何故か集落周辺はスマホ電波3本状態!アプリのヤマレコを使い神社までアクセス。
登山者が使うヤマレコは、登山道ルートとGPS現在位置を確認できる登山者にはかかせない優れたアプリ。万が一のためにインストールだけはしていたものの今まで使ってことはなく、最初からこれを使えば良かったと後悔、まさか電波があるとは想定外でした。
ヤマレコの登山ルートをたどり何とか神社周辺に到着。ただこのルート他に通った人がいるのか疑問に感じるほどの道なき山道状態、近くになると目印となる代々のお墓が立ち並んでいました。
熊野神社の様子
熊野神社は集落から小高い尾根付近に存在していて、手前には代々のお墓や石像が乱雑に立ち並んでいる状態。現代で見るような墓石は1基、水を入れる湯飲みや墓石が少し崩落しそうになっていたので、位置だけでも直そうと触ろうとした瞬間!何か閃いたように脳に電撃が走り体が拒否。全く集落と関係ない人物がお墓に触るとどうなるのか?それを冷静に考えると絶対なにか祟り的に悪い事が起きそうな予感!それを普段首から下しか使わない自分がこの時だけは一瞬で頭をフル回転させ、眠っている魂を起してはいけないと判断しました。
乱雑している石像の中には「花山弥九郎」の文字が刻んであり、花山天皇と何らかの関係があるようにも見えます。ここで気になったのが、お墓や石像が一区画に集められているように見え、昔は土葬だったことからもどこか他の場所から移動してきたような印象。それだけ見ただけで不自然な集中配置でした。
供養塔の石には宝暦11年の文字、今から約260年以上前の江戸時代の物。本当はコケなどを取り払い、掘ってある文字を全部読みたかったものの、後で何か起きるといけないので見るだけ状態。
熊野神社の現在は少し崩落している状況。大正時代の神社写真と現存する建物は、若干屋根の形状が違うので建て替えたと考えられ、鳥居も年月がたったことにより朽ち果てなくなっています。
立派な梁部分の一部に龍の彫り物。縁起物として知られている龍は、昔は五穀豊穣や雨ごいなどのご利益があるとされている水神、集落の一番高い位置に神社が建っている様子からも集落の人達にはかかせない場所だったかもしれません。
ちなみに神社の屋根瓦にも水マーク有り。
神社の石段から集落まで降りる
神社から集落までは、建物の目の前にあった石段がどこに繋がっているのか気になったので降りてみましたが、登山道のように人が通った跡があり、最終的には集落の岩下に石像があった家跡付近に到着。昔は集落から神社まで明確な道があったことを考えると、人がいなくなった場所は道すら消えてしまう不思議な感覚。
こんな感じで大入集落の各ポイントをコンプリートしてみましたが、現在も一部の建物は現存していて、立派な石垣は人々が暮らしていた証をあらわしているようにも見えました。
人々が離れていった時間がとまったままの廃集落!家が朽ち果て自然と一帯化した様子はどことなく寂しささえ感じるものの、思い出がいっぱい詰まっていて、記憶の中で永遠に存在しつづける場所かもしれません。
大入集落に行った感想まとめ
今回の秘境スポット巡りは、第65代目花山天皇の隠れ里伝説がある東栄町の大入集落に行ってみましたが、こんな場所に本当に集落があったのかというくらい想像をはるかに超えた山岳地帯に存在していて、愛知県の秘境スポットの中でも最強秘境地帯の体感。その集落を探索して分かった事は、家や付近を見渡しても電線一本、残留アイテムに電化製品がなかったので、昭和になっても電気がきてなかったのが伺え、そこでの暮らしは相当過酷さを極めていたのも良く分かりました。
肝心な花山天皇の痕跡については明確にはわからなかったものの、石像の花山文字は末裔の意味を示しているように感じ、少し変わった苗字が偶然にもここで住んでいたとは考えられないことから、自分的にはここに何らかの理由で滞在した際に伝説に繋がった印象です。
大入集落まとめ
- 徒歩で片道2時間ちょっと
- 完全に周りは秘境地帯
- 集落には花山さんが住んでいた
- 瓦に水文字マーク多数
- 昭和30年代に無人集落
- 集落付近だけ携帯電波3本
- 電気は集落にきていなかった
- 水源は湧き水のような場所があった
- 家は全部崩落
- 熊野神社は現存
大入集落を全体的に見て簡単にまとめるとこんな感じで、現在は県道429号から歩いてアクセスできますが、昔はその道がなかった様子から隣集落を行き交うにしても移動はかなり大変だったと想像でき、それでもこの地を選び守りつづけ発展させていた事を考えると、大入集落は必要不可欠だった場所かもしれません。残された石垣1つとっても廃集落に行くと当時の暮らしが蘇るような錯覚さえあり、思いを馳せますね。